今年も積雪の時期になってきました。今年はなんでも10年に1度の大雪になるという予報も出ております。そんなボジョ◯ーヌーボの宣伝文句のような予報はさておき、トラックドライバー・レンタカー店員と車に関わる仕事も経験してきた筆者が雪が降ると憂鬱になるのが運転です。
技術的に運転できないという訳では無く周りの事を全く考えていないドライバーが出てきたり、出張や観光で普段雪を見ない運転手が出てくることが憂鬱と言っても過言ではありません。
そこで今回は雪道を運転する上でぜひやめて欲しい行為を3つ紹介します。どれも自分だけでなく周囲も巻き込んで危険な行為なので雪国で運転する際は注意してみてください。
危険行為①:車体の雪を落とさずに運転する
なんといっても多いのが「雪おろしをしない車」です。屋根の上にこんもりと雪を乗せて走っている車を1日に数台は見かけます。人によってはふざけて「ダイナミック雪おろし(笑)」といって急ブレーキ・急発進の慣性で落とす人もいますが普通に危険です。雪を落とさないで走行する危険にも種類があります。
①自車の視界不良
普段雪を見ない人のために丁寧に解説をすると、そもそもエンジン始動直後で車内が寒い状態では雪はなかなか滑り落ちません。車内が暖房で温められることにより熱で屋根の接地面が徐々に融けていきます。そうなると非常に滑りやすくなります。冷凍庫の氷も出した直後は冷えてペタペタしたり指にくっついたりしますが表面が溶けて水の膜を張ると途端に滑り出します。そのためフロンタガラスだけ雪をはらって屋根の上に雪を残しておくと走行中温度が上がってきた時に滑り出すのです。
発進の勢いで後ろに雪が落ちるならまだしも(それでも後続車に大変迷惑ですが…)ブレーキで前に雪が滑り落ちてくると前が見えなくなります。勢いや雪の量によってはワイパーアームごとやられることもあります。重い雪だとワイパーが折れることはなくても重みに負けて動かなくなり視界不良となってしまうこともあります。
②後部の雪でブレーキランプが見えない
雪をはらわないで乗るというのは屋根の上だけではありません。特に迷惑で危ないのが車両後部の雪をはらわずに乗るという行為です。
上の写真のように雪をつけて走っている車を時折見かけます。窓は出ているし自分は後ろが見えているから大丈夫と思っているのかもしれませんが周りからするとブレーキランプが見えず減速のタイミングがわからないので非常に危険です。雪道なのでこちらも相応に車間は空けて走りますが、ただでさえ視界不良で前が見えない雪道でブレーキタイミングもわからず前から近づいてこられると反応はできても対応しきれない場合もあります。
近年普及しているLEDライトはハロゲンライトに比べて熱を持ちにくいのでライトをつけていてもなかなか雪が融けません。せめて前後方のライト周辺だけでもいいので雪をはらいましょう。
③氷塊が風圧で飛ぶ
屋根の雪を下ろさずに乗ると室温で溶けてフロントに振ってくるという話をしましたが危険はそれだけではありません。雪が一度融けても走行距離が短く落ちなかった場合、夜間に気温が下がった際などに再凍結します。そうするとフワフワだった雪が徐々に氷の塊へと姿を変えていきます。
その氷塊がバイパスや高速道などで風圧がかかった際に後続車へと飛んでしまうのです。フワフワの雪なら被害はありませんが屋根の上に乗った氷塊が飛んでくると後続車のフロントガラスくらいは余裕で割れます。車ならまだしも歩行者に当たった場合は大惨事です。
このような事故を未然に防ぎ加害者にならないためにも冬場の雪おろしはこまめに行いましょう。
危険行為②:吹雪での無灯火
迷惑行為二つ目は無灯火です。昼間にライトをつけるというのは人によっては違和感があるかもしれませんが自車の居場所を示すためにもライトは必要です。吹雪いている時などは特に視界が悪いので車幅等やデイライトだけでもつけていると視認性が上がります。中にはフォグライトをつけて走る方もいますが筆者個人的には「つけないよりはマシだけど正直迷惑…」というのが感想です。フォグライトは本来霧で視界が悪い時につける用のライトなので雨や雪で使われると乱反射が激しくこちらが幻惑気味になってしまい余計に見えづらい時があります。
ハイビームではない普通の下目ライトで来てくれるのが一番見やすいです。
ライトも雪おろし同様運転手が見やすいかどうかではなく対向車に自分の位置を知らせるためにつけるものです。特に雪の中で白い車は発見が遅れやすくなります。
危険行為③:ひたすらゆっくり走行する
迷惑行為三つ目はノロノロとゆっくり走るです。
雪道ではスリップの危険があるので夏場のようにガンガンアクセルを踏んで走るということはできません。しかし、スリップを恐れるあまりゆっくりダラダラと走っているとさらに怖いことが起こりかねません。
①トラックを停めてしまって誘引事故
雨が降ろうが雪が降ろうが物流を止めるわけにはいかないのでトラックもスタットレスやチェーンをつけて公道を走っています。のんびり走るとそのトラックの邪魔になってしまいます。ではなく変なところでトラックを停めてしまうと重量があるトラックは再起不能になってしまう場合があるのです。雪が降るとテレビで「トラックが止まってしまい立ち往生・・・」なんてニュースが入りますがそれです。重量があってパワーがあるトラックは雪道で止まると雪を巻き上げてしまいスタックしやすいのです。当然ドライバーもそんなことはわかっているので極力止まらないように車間を空けて対策したりします。特に危ないのが陸橋の登りやバイパスのアップダウンです。完全に凍ってアイスバーンという状況や暖気(気温が0°C以上になると雪が融けやすい)してグチャグチャのコンディションの中を登りで止まると本当の意味で再起不能となることがあります。
「雪道には4WD!」と言っても大型トラックに全輪駆動なんてほとんどありません(トラック駆動方式を解説したサイトもあるので興味のある方は参考までに)。2tや4tくらいのトラックであればスイッチを押したりレバーを引けば全輪駆動になるというものもありますが大型車では少ないようです。
上り坂は加速によるGに加えてトラックの場合荷台も後部になるので後輪への荷重がかなり高い状態になります。その状態で駆動輪である後輪が滑ってしまうと坂を登るどころかタイヤが空転しながら抵抗できず逆走することすらあります。
こうならないためにトラックは平地から勢いをつけて一気に坂のトップまで行こうとするのですが、乗用車が途中でのんびりしていたり「トラック遅いから…」といってブレーキングしながら割り込まれると坂の途中で停止を余儀なくされ動けなくなってしまいます。
「怖いし法定速度以下で走るのは問題ないから!」と言ってただただゆっくり走っていると最悪の場合国道やバイパスを止める可能性もあります。今ではほとんどのトラックにドラレコが付いているのであまりにもひどい場合は犯人探しされる可能性もあるので注意しましょう。
②バイパスなどで立ち往生
ゆっくり走る危険性は誘因事故以外にもあります。
雪の降る東北地方などでは山間部をバイパスが通っていて隣の市まで大きなバイパスを走って移動するという場所が多くあります。この「山間部」が危険で吹雪くとホワイトアウトしてしまい10m先が見えなくなるということがたまにあります。しかし、バイパスが通勤・通学の生活道路になっている場所も多く、そこを迂回すると更なる山道ですれ違いもできないような「旧道」を通らなければならないという地域も非常に多いです。そのため注意しながらバイパスを走行するのですが、ここでゆっくり走ると問題が起きます。
それは前方車に置いて行かれて立ち往生するという事態です。
10m先が見えるか見えないかという時は前方車と一定の間隔を保ったまま前方車のテールランプを頼りに進むしかありません。それを数十台繋げて信号などの目印や吹雪のおさまる遮蔽物のあるところまで走るしかないのです。「道路の白線で行けるから関係ない。」というのは雪を知らない人の意見で雪が積もると白線どころかガードレール・路肩の縁石・側溝などありとあらゆる物が真っ白で見えなくなります。雪国では信号の手前に「停止線」と書かれた夏に見ると意味不明な道路看板が立っているくらいです。
これを知らずに「雪で走るのが怖いから」とゆっくり走ってしまうと前方車に置いて行かれてしまいバイパスのど真ん中で道路も見えずいきなり雪の中から対向車が飛び出してくるかもしれない恐怖と闘いながら運転しなければならなくなってしまいます。そうなると慣れていないドライバーは止まって吹雪が弱まるまで待つか10km未満で探り探り走るかのどちらかになってしまい後ろは大渋滞です。
ある程度の車間と無理はしないという制限は必要ですが、雪道においてはただゆっくり走ればいいというわけではなく状況によっては前の車が見えるくらいのスピードで走り続けるという意識も必要です。
まとめ
雪道の運転はそれなりにリスクがあり周囲の交通への配慮も普段より必要になります。普段運転しない方や自信のない方は公共交通機関を検討した方が良いかもしれません。関東で雪が降ると電車やバスのダイヤは完全に乱れてしまいますが、雪国ではそれが日常なので遅れが出ても運行はしていることが多いです。
それでも運転するという場合は自衛のためにも周囲に配慮して運転しましょう。
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