
高圧ガスを扱う資格の中で最も基礎的な資格の一つが「保安業務員」です。一昔前は講習を受ければ最後に簡単な試験のみで受講すればほぼもらえる資格と言われていたようですが、現在は油断して受けると普通に落とされる資格となりました。
今回はそんな保安業務員資格の概要と対策などについて簡単に解説していきます。
保安業務員の概要と資格取得のメリット
まず、なぜそもそも保安業務員という資格があるのかについて解説します。
一言でまとめるなら「2号業務を行うため。」です。
プロパンガスの容器交換時には「2号業務」と呼ばれる「容器交換時供給設備点検」というのを行わなければいけません。ガスボンベが腐食していないか・家主が近くに引火の原因になるものを置いていないか(火器距離)・メーターは正常に作動しているか・高圧ホースはひび割れたりしていないか等供給設備の点検を行い記録に残さなければいけません。その「2号業務」ができるようになるのが保安業務員です。
取得するメリットとしては保安業務員資格があればガス会社でLPガスの配送、容器交換の仕事ができるようになります。逆に言えばこの仕事以外ではほぼ使いません。
LPガスは都市ガスと比べ使用量が割高になる傾向があり、都市ガスの通る地域では敬遠されたりオール電化の普及により使用量は年々下がっています。それでも火力が必要な飲食店ではLPガスでなければいけなかったり、災害時にはボンベさえ繋げば火が使えるという機動力の高さ、ユーザーのメンテナンスコストの安さが再評価されてきています(都市ガスの埋設管は地域単位の修繕に億単位のお金がかかりますがLPガスはメーターと家庭の配管のみなので比較的安価で済みます)。
いずれにしても完全になくなるということはまだまだ先の未来になりそうなので、当分なくなることはない仕事と言えるでしょう。
資格取得までの流れ
ここからは実際の資格取得までの流れについて書いていきます。
①申込までの流れ
年間の講習予定は高圧ガス保安協会のHPに公開されているので確認してみてください。残念ながら令和8年度開催予定の1回目、2回目の申し込みはすでに終了してしまっています。
毎年そうなのですが、年度が切り替わってすぐくらい(4月初めくらい)に年間予定が公開され、それから1ヶ月程度で申し込み期間が終わるので意外と時間がありません。申込の期間自体も2週間程度なので気づいたら申し込みが終わっていたなんてこともよくあります。
3回目の講習は年度はじめでは決まっていないことも多いようです。高圧ガス保安協会に所属している事業者にはいつどこで講習がありますという案内文がまわったりしているようですが、そういった事業者に所属していない方はこまめにHPをチェックするしかなさそうです。
詳しくは各自治体の高圧ガス保安協会に直接問い合わせてみるのが一番確実でしょう。
②オンライン講習受講
以前までは会場での講習日程が2日間取られており、会場に集合して講習を受けて2日目の最後に検定試験を受けて終わりという形式だったようです。それがコロナ禍以降講習の方法が大きく変わりました。現在はインターネットによるオンライン講習を受講した後で各会場に集合して検定試験を受けるという方式が取られています。
申込の段階で顔写真やメールアドレスを登録する項目があり、登録するとメールアドレスにメールが届き、そこに添付されたURLから入っていくと講習を受講できるというものです。
高圧ガス保安協会のHPにもあるように保安業務員の講習は2日間合計13時間です。
講習動画はカテゴリーごとに分かれており長いカテゴリーでは動画1本30分以上あるものもあります。オンラインなので何度も同じ項目を見返すことももちろん可能ですが、初視聴の際は早送りもできませんし、一度は最初から最後まで通しで見ないと受講履歴として残りません。
講習期間自体は2〜3週間ほどありますが、動画自体がかなり長いので最終日の夜にまとめてやろうという夏休みの宿題スタイルではそもそも時間が足りなくなる可能性があります。また、講習の内容で検定試験の内容はほぼカバーしているのですが、それでも試験に向けた勉強は必要になるので早めに一度視聴して問題集のわからない部分を再視聴するくらいの余裕があった方が良いでしょう。
③検定試験
講習期間終了後1〜2週間ほどで検定試験があります。検定試験の日程は全国共通で一斉受験です。
今年も例年と同じスタイルであれば、完全持込不可の全15問・五者択一式です。
高圧ガス関連の試験は学校で出てくる択一式の試験とは少々異なります。
『問1:◯◯について正しいものはどれか。』という問いに対して
- イ)・・・・・・・
- ロ)・・・・・・・
- ハ)・・・・・・・
といった形でまずはそれっぽい文章や選択肢があります。
ここから
- 1)イ
- 2)ロ
- 3)イ、ハ
- 4)ロ、ハ
- 5)イ、ロ、ハ
といった具合で数字の選択肢があります。選択肢としてはイロハで答えるのではなく数字で選ぶ形になります。
保安業務員の上位資格となる高圧ガス製造保安責任者などの高圧ガス関連資格はほぼ全てこの形式です。
この方式のポイントとしては選択肢が一つでも分かれば消去法で選択肢を一気に絞り込むことができるということです。イロハすべての内容がわからなくても今回の場合ハが確実に間違っていると分かれば1)か2)に絞られます。逆の考え方もできてロが合っていると確信できる場合は1)と3)は選択肢から外れます。そこから先はどこまで理解しているかにはなりますが確実な選択肢があれば絞りやすい問題形式ではあります。
試験傾向と対策
それではここからは実際の試験傾向や対策について触れていきたいと思います。
①合格ライン
対策以前にそもそもの合格ラインですが、多くの高圧ガス資格の合格ラインは6割以上と設定されています。保安業務員試験も例に漏れず6割以上で合格です。
全15問なので9問以上で合格となります。
簡単そうに見えるか難しそうに見えるかは人それぞれですが、筆者は最初これくらいなら余裕だろと思っていましたがやっていくうちに試験範囲の広さに少し不安になりました。なんとか合格はしましたが自己採点では13点くらいだったはずです。
全体の問題数が少ないので1問当たりの比重が大きくなってしまい「あ〜…この問題自信ないな〜。」が2、3問あると思い込みや読み違いによるケアレスミスも含めあっという間に10点くらいまで下がります。そうなってくると合格がギリギリになってしまいがちです。
②大まかな試験傾向
このブログでは一問ずつ解説するようなことはせず試験の大枠と傾向について筆者が感じたことを書いていきます。
ⅰ:試験の大枠
試験の大まかな傾向についてですが、保安業務員試験は本当に『広く浅く』です。
内容としては以下のようなものになります。
- 高圧ガス保安法、液石法について
- 供給設備、消費設備について
- 基本的な化学とLPガスの特性
- ガス容器について
- 調整器とメーター
- 配管材料などについて
- 燃焼器等について
- 保安距離等安全措置と高圧ガスの移動(車載方法)について
このような内容が1問ないし2問くらいずつ出題され全15問になります。
もちろん年度や回次によってはない問題もありますが、大まかにこれくらいというものです。
上位資格の高圧ガス製造保安責任者という資格になると丙種化学・乙種化学(乙種機械)・甲種化学(甲種機械)と上がっていくのですが、どれも『法令』『学識』『保安管理技術』の三科目に分かれておりそれぞれ6割といった形式になります。保安業務員でも簡易的にこの形式を採用しており、法令として液石法や高圧法のさわりの部分が出題され、学識として簡単な化学式などが出題され、保安管理技術として消費設備や配管材料の話が出てきます。
保安業務員試験はとにかく『広く浅く』なので過去問に出てくるところを満遍なく覚えるというのが重要です。
ひっかけや数字の入れ替えが多発する項目
実際に勉強を進めていけば感じることですが、試験や内容の特性上数字の入れ替えやひっかけのポイントは決まってきます。
個人的に勉強していて一番苦しんだのはマイコンメーターの有効期限と最大流量・計測方式などです。覚え方もありますし、メーターの文字やナンバリングも規則性があるので理解してしまえば簡単なのですが、テストでいざ羅列されると覚えたはずの有効期限などの境界線が曖昧になり急に不安になります。マイコンメーターはほぼ確実に出題される項目なので押さえておかなければいけないポイントではあるのですが、数字の苦手な人にはなかなかいやらしい項目です。
また、燃焼器の問題も内容によってはいやらしい問題になることがあります。燃焼器は給排気方式によって自然排気・強制排気・自然給排気・強制給排気と分かれ、さらにそこから細分化された上にアルファベットがふられているので初心者にはちんぷんかんぷんです。これも当然法則がありアルファベットにも意味があるので謎の呪文を覚える作業にはなりませんが、給排気方式による違いまで説明できないと確実な得点が難しくなるような問題も出るのでなかなかいやらしい項目です(個人的には捨て問でした)。
法令問題でもひっかけや言い回しを少し変えて出題される問題が時折出題されます。特に第一問でよく出てくる法の目的をつらつらと書いたような文章は重要語句を入れ替えたりして出題されることが非常に多いです。逆にこの手のひっかけは定番すぎて、一度過去問で触れると「またそのパターンね!」となるくらいのものなので落とさずにいきたいところではあります。
悪いことばかり書いても良くないので個人的にやりやすいなと感じたところも書いていきます。
正直『学識』に関連するところは得点しやすい気がします。「プロパンの分子量は58である(C3H8で分子量44なので間違い)」「1kJは1000Jである(正しい)」といった具合に中高の理科をある程度受けて入ればわかるような常識問題のような化学が出題されます。『学識』は例年6問目7問目くらいに出題されますが比較的簡単というか答えやすい内容にはなっているので確実に取りたい2問となります。
時折現れる激ムズ問題
保安業務員試験でも稀にあるのですが、どう考えても試験に対して難易度が限界突破している問題が時折現れます。講習動画でも解説しないで流す程度にしか触れないでテキストにも注意書き程度にしか載っていないような問題が出題されることが稀にあるのです。重箱の隅をつつくにも程があるだろというレベルの問題です。
保安業務員に限らず丙種化学などでも時折あって「こんな計算過去に出題されたことないし、なんなら内容乙種のものだろ!」といったものが数年に一度くらいの頻度で出題されることがあります。
そのような問題が出たらオススメは『潔く捨てる!』です笑。わからないものをいくら考えてもわかりません。特に計算問題などで気合いを入れれば解ける問題ならまだしも、そもそも知らなければ解けないような問題をいくら考えても解けるわけありません。そこを必死に考えて余計不安になるくらいならあっているであろう問題を見直して読み違いをしていないか確認したりすることに試験時間を使ったほうが有意義です。
しかし、ここで勘違いして欲しくないのはそんな問題が出題されることは稀であり基本はそこまで難しい問題は出ないということです。よく試験が終わると「今年は難しかった」「何問目がおかしい」という話は聞きますが、過去問を何回分も何周もしていると「いやいや似たような問題出たことあるけど…」となります。そして出たとしても1問です。それによって試験全体を落とすということはまずありません。
③試験対策
事前の講習が会場での集合講習だった時代は講師の先生が「この辺は重要ですよ!」とそれっぽく教えてくれていたようですが、オンライン講習ではそんなこともなくなりひたすら全項目を見るだけになってしまいました。全項目を講習動画だけで完全に暗記するのは到底不可能です。
講習動画は早めに1周して受講履歴を作り、その後過去問の1周目の際に調べてもピンとこない項目をもう一度見返すといった使い方の方が良いでしょう。
一度講習動画も見終わり、ある程度保安業務員の仕事や容器交換の事前知識があるという場合はひたすら過去問をやって問題慣れしていき、間違えた箇所を調べ直すを繰り返していけば合格点には十分達するはずです。
受験してみて感じたこと(個人の感想です)
ここまで傾向やら対策やらと偉そうなことを書き連ねてきましたが、保安業務員試験自体は正直そこまで難しい試験ではないと思います。自己採点で間違えた問題も見直しましたが、深読みのしすぎによる読み違いやケアレスミスがメインで、問題自体が触れたことがないという難易度バグ問題はありませんでした。
ただ、ある程度は勉強していかないと普通に落とされるなというくらいの難易度ではあります。高圧ガス初心者が「会社に受けろと言われたから…」という理由だけで講習動画を流し見して雰囲気で受けて受かるような試験ではありません。採点も隣の人と交換して丸付けや、会場の試験監督が集めてその場でといった方式ではないので恩赦も下駄を履かせるもありません。ダメならダメでそれまでです。
これから取得を考えている方は参考にしてみてください。

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