【2024年問題】下請法適用で物流は変わるのか・・・

ニュース記事
荷主の「買いたたき」、公取委が迅速に取り締まり…「2024年問題」を受け下請法改正へ(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
トラック運転手の不足で輸送力の低下が懸念される物流の「2024年問題」を受け、公正取引委員会が下請法改正に乗り出すことがわかった。荷主と運送事業者の取引は現在、下請法の対象外だが、同法を適用できる

物流の2024年問題を受け公正取引委員会もようやく法改正に動き出すようですね。

しかし、法改正して「買いたたき」を規制したところで本当に物流の現場が変わるかは疑問です。

実際に物流の現場にいた筆者が解説していきます。

これまでの政府の対応

物流の2024年問題を受けて政府が取り組んだこととして大きく取り上げられたのはなんといっても「トラックの速度制限緩和」でしょう。

【物流2024年問題】高速道路のトラック、4月から最高速度90キロ - 日本経済新聞
政府は27日、総重量8トン以上の中大型トラックについて、高速道路上での最高速度を、現行の時速80キロから90キロに緩和する改正道交法施行令を閣議決定した。4月から施行される。トラック運転手の残業規制が同月から強化されることに伴い、物流業界で...

労働時間の制限が厳しく荷物が運べないというのなら時間内に急いで運べるようにするという小学生が考えそうな対策です。

高速道路を走っていればわかりますが、速度制限以下で走っているトラックは大手の看板を背負ったものがほとんどで100km近く出して走行しているトラックもたくさんいます。筆者が勤めていた会社はそこそこ大きな会社だったので制限が厳しかったのですが、別の会社から入ってきた人達の話を聞くと「どこの配線を切ればリミッターが外れる」「スピーカーのどの部分を爪楊枝で刺せばうるさい音が切れる」というのがドライバー内でも回っているようです。

正直今更速度制限を緩和したところで大手は「安全意識」から自社の速度規制を設けているでしょうし、今まで守っていなかった会社からすればやっと自分たちのスピードが合法に近くなるといった程度でほとんど影響はないでしょう。

「買いたたき」の禁止

読売新聞のニュース記事では公正取引委員会がこれまで荷主と運送事業者に適用されなかった「下請法」を物流現場にも適用できるようにして荷主からの「買いたたき」を取り締まっていこうという内容のものです。

下請法の概要に関しては公正取引委員会がガイドラインのような形でまとめています。

「買いたたき」とは簡単に言うと値上げ交渉に応じなかったり、一方的に値切る行為のことを言います。これまで物流の現場ではなかなかドライバーの賃金や燃料費の高騰を運賃に上乗せできませんでしたが、そこを価格交渉しやすい環境にしていこうといった動きが今回取り上げられているものです。

しかし、残念ながらドライバーの立場や仕事内容を知っているとこの法改正も大した期待はできない法案だなと感じてしまいます。

値上げ交渉されたら運送会社ごと変える

当然荷主からしたら運賃の高騰は自社のコスト増に直結するので避けたいところです。そうなると価格交渉してきた運送会社には「物価上昇などで大変ですよね。検討させていただきます。」と口ではいっておきながら現状価格で走れる運送会社を新規に探すといったことを始めます。新規事業者では多少割りに合わなくてもなんでもいいから仕事が欲しいという会社もあるので比較的簡単に見つかります。

さらに大きな荷主(工場)等では年に1・2回コース改編として発注元の物量を見極めながらどの会社に仕事を依頼するのかを見直したりします。そのような契約更新に近いコース改編を使って正当な理由をつけて値上げ交渉してきた会社を徐々に追い出していくことも可能です。

あくまでも「荷主」×「運送会社」の話

また、現実問題として荷主が値上げ交渉に応じてくれたとしてもそれがドライバーに反映されるかどうかは別の話です。あくまでも荷主は運送会社に対して対価を支払っているので運送会社が給料を上げなければ現場のドライバーには還元されません。

それどころか荷主が価格交渉に応じる条件として「手下ろし(バラおろし)」のキツイ仕事を一つ追加で請け負ってくれないかと来ることも考えられます。そうなると運送会社としては単価も上がって仕事ももらえるのでいいことのように感じて請負いますが、現場としては給料も上がらないのにただキツイ仕事を増やされただけでより不満が溜まり離職の原因となります。

現場が本当に求めている対応

今回の法改正案では価格交渉がしやすくなるなどあくまでも「運送会社」としてのメリットが大きい物であり根本的なドライバー不足の解決にはなっていないように感じます。

現場が本当に求めているのはいかに「楽をできるか」です。

荷下ろしの廃止or発注者負担

コンテナやダンプ・タンクローリーなど物理的に手下ろしできないもの以外を運ぶドライバーの主な仕事は荷役作業です。工場で荷物を積んで倉庫や店舗で荷物を下ろす作業が大半です。大型トラック10tいっぱいを手で下ろすとなると最低でも1時間はかかります。商品の種類が多い現場や台車への仕分けが面倒な現場では2時間以上かかる場合もあります。本来商品は発注者様の物でありドライバーはあくまでも「運転手」です。家にやってくる個人宅配送の佐川やヤマトも玄関前までしか持ってきませんし中をみて検品などはしません。現在の物流現場は給料云々以前にドライバーに対して負担をかけすぎです。

その点海上コンテナはそこが明確に区分けされていてドライバーは荷物の中身に触れられないだけではなくそもそも中身を知らないということもあります。そのため海上コンテナの場合は発注元が各自で荷下ろしをしてくれる人を手配しなければなりません。このようにドライバーは荷物に触らなくてもいいという流れにしていかなければこれからの時代人は集まらないでしょう。

近年では現場によってはドライバーはトラックの荷崩れ防止の養生を解除してくれればあとはフォークリフトでおろして別の人が仕分けをするという現場も増えてきました。当然そのような現場は固定で人が入りたがりますし既に人手不足ではありません。結局のところ荷主が楽をするためにドライバーに負担を強いているような現場は毛嫌いされますし人手不足です。

延着をドライバーのせいにしない

現代はドラレコやデジタコの普及によりドライバーが今何をしているのかはほぼリアルタイムで確認できます。当然運行管理もドライバー経験者がいたりしてバカじゃないのでサボっているかどうかは見ればわかります。しかし、渋滞や交通規制などやむおえない場合でもドライバーのせいにする運送会社や荷主がたくさんいます。ドライバーとしては会社や客先に詰められたくないからスピードを出しますし急ぎます。その時間のプレッシャーが思ったよりもストレスになります。よく抜け道くらいあるだろと詰められますが大型になると狭い道に入るのはそれこそリスクです。大型禁止やすれ違いができない場所で動けなくなることもあります。

自力で解決できない渋滞まで自分のせいにされていたらドライバーも嫌になります。国としては速度制限緩和なんて意味のないことをしていないで連休の渋滞解決策をなんとかしろと言いたいのが現場のドライバーです。

まとめ

私がいた会社の営業所では約40人中30人が荷下ろしのしすぎで腰を壊していました。このような危険な体に負担がかかる作業を廃止させ荷主にも負担させていくという動きがこれからの時代には必要なのではないでしょうか?

いくら「買いたたき」を規制したところで運送会社の利益にはなってもドライバー離れは防げないでしょう。あくまでも運送会社が荷主に交渉する際の材料の一つであり根本解決にはなっていないような気がします。

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