佐川急便の車輌にこれまで付いていたドライバー名の名札表記を3月に廃止決定という記事に対して元トラックドライバーの視点から解説していきます。
記事内ではSNSでドライバーを誹謗中傷されてからでは遅いということで廃止に至ったとありますが、実際問題として佐川急便ではないにしてもすでにYouTubeなどでは「トラックに煽られた」「無理な幅寄せをされた」といった動画なども拡散しています。私のドライバー時代にも別の営業所や関係会社のドライバーでクレームが入って降ろされた人もいます。そこで運送会社内の対策やシステム面も踏まえて解説していきます。
名札を外すメリット
結論から書くと個人的に名札を外す行為には賛成です。
記事内でも書かれていますが、近年はSNSの普及に伴い画像や動画が瞬時に拡散されてしまいます。そんな時代に本名を晒して運転するというのはリスクしかありません。場合によっては住所や顔写真・家族構成まで拡散しかねません。
また、ドライブレコーダーの動画をうまく切り取ってトラックを悪者に仕立てる動画なども散見されます。本来は撮影者が通行帯違反をしていたりするにも関わらず、前後をカットしていかにもいきなりトラックが割り込んできたように見せかける動画などもあります。
ドライバーも一人の会社員であり公人ではないので個人情報保護の観点からも名札を外すのは良い動きと言えるでしょう。
デジタルタコグラフによる管理
元々はドライバーに安全運転の意識付けをさせる目的で行われていた名札ですが、外してしまうことによって運転が荒くなる人がいるのではないかという意見もあります。こちらの意見ももっともなのですが、現在営業用の緑ナンバーのトラックにおいては車両総重量7t以上または最大積載量4t以上で運行記録系(デジタルタコグラフ:通称デジタコ)の積載が義務付けられています(全日本トラック協会HP参照)。このデジタコはGPSとも連動していて、営業所の端末で誰がどこを時速何キロで走行しているのかをほぼリアルタイムで確認できます。大手の運送会社では従業員の日報管理も含めて2t車などにもこのデジタコが導入されています。実際私のいた会社では全車に導入されていました。
さらにデジタコは急発進や急停止の記録の他に会社が任意で決めた制限速度の警告も行うので荒い運転を行うと即時会社にバレます。
名札がなくても大手の会社であればデジタコがあるので急発進や急ブレーキ・激しい横Gがかかる運転はできません。
ドライブレコーダーによる管理
2022年5月以降発売の新型車には前後方にドライブレコーダー設置が義務付けられました。さらに2024年5月以降は継続生産車も同様にドライブレコーダーが義務化されました。
大手の会社であれば会社とドライバーを守るという観点から義務化されていない車両にもドライブレコーダーを搭載している場合がほとんどです。場合によっては前後だけではなく左右と車内までドライブレコーダーが付いている会社もあります。この場合荒い運転だけではなくながら運転などをするとすぐに会社に呼び出されます。
ドライブレコーダーも録画時刻が表示されるのでデジタコと合わせてチェックされるとどこで何をしていたかわかるので下手な言い訳はできないようになっています。
まとめ
名札がなくなると身バレしないからやりたい放題になってしまうのではないかと心配する声もあるようですが、名札がなくなったところでデジタコもドラレコも積んでいますしその性能も日々高くなっています。現代のドライバーは想像する以上に色々なシステムに囲まれて制限されています。
そんなことよりも自分は匿名で相手を名指しでクレームを入れたり理不尽に晒したりする行為の方がよっぽど問題です。
私のいた会社も理不尽なクレームであってもドライバーの責任にして詰めてくる会社でした。佐川急便さんの名札廃止はドライバーをクレーマーから守る良い動きの第一歩ではないでしょうか。
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