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物流会社の人材流出

ニュース記事

2026年になった現在も物流業界では『2024年問題』という言葉をよく聞きます。2024年の法改正により今まで通りの方法では荷物を運べなくなって大変ですよ!というやつです。以前『430休憩の闇』ということで2024年問題の一例を解説したこともあるので興味がある方は読んでみてください。

いつまで2024年の話をしているんだという気にはなりますが、そんな中でも少し気になる記事を見つけました。

「これ以上は給与を上げられません」 運送会社の経営を揺さぶる人材流出! 「退職倒産」初めて10件超え、現場で何が起きているのか?(Merkmal) - Yahoo!ニュース
人手不足に悩む運輸業界で、今いる従業員に辞められることの経営的ダメージがかつてなく重みを増している。帝国データバンク(東京都港区)の調査によれば、2026年1~7月に判明した従業員退職型の倒産は前

記事を筆者なりに要約して箇条書きにすると以下のような感じでしょうか。

  • 現在物価、燃料費等の高騰によるコストプッシュインフレが起きている
  • 価格(運賃)転嫁したくてもやっぱり荷主が強い
  • 2024年問題も相まって昔のように走らせられない。
  • そのせいで給料も頭打ちしてしまい、見切りをつけたドライバーが辞める←今回のテーマ
  • これらの負の連鎖を断ち切るには物流会社以外の荷主や消費者との連携が必要
  • 輸送の効率化のためにもモーダルシフト等の取り組みも必要になってくる

個人的には2024年問題はトラックにも乗れない現場もまともに知らないバカ役人の招いた人災だと思っています。現在も物流の現場に関わっていますがドライバー、運行管理者、構内作業員誰一人として2024年の改善基準告示のことをよくいう人はいません。制約を増やしただけの悪法に近いです。

記事では2024年問題による影響や物流の効率化などについて触れられていますが、正直この記事自体もドライバー上がりの筆者からすると本当に現場知ってるのか?と疑いたくなるような内容です。Yahoo!ニュースに載るくらいなのでそれなりに知名度のある方なのでしょうがどこか学問的というか形式的な内容になっているように感じます。

そこで今回はこの記事をベースに本当の配送の本当の現場について遠慮なしで書いていきます。これから物流業界への転職を考えている方は参考にしてみてください。

人材流出の原因は『給料以外』

いきなり結論を書きますが、物流業界で人が辞める原因の1位は『給料が安い』ではありません。『給料が安い』も理由としてはもちろんあがるのですが、それは複数の理由が重なってきた時の一つです。少なくとも「この会社就労環境は完璧なんですけど、給料安いんで転職します!」と言って純粋に「給与面」だけが理由で辞めた人は見たことがありません。

物流業界の退職理由で1番多いのは他業種と同じでやはり『人間関係』です続いて多いのは物流業界にはつきものである『事故』です。この二つが原因でやめていった人は何人も見てきました。

ドライバーなんて走り出してしまえば一人だし人間関係なんて何がそんなに大変なんだ?と正直筆者も転職前は思っていました。しかし、運送会社にもよりますが思ったよりもドライバー×ドライバー・ドライバー×運行管理・運行管理×運行管理でギスギスしている会社は多いです。特に荷役作業に手下ろしがあるような会社では手当などでしっかりと棲み分けをしていないと、なんで自分にだけキツイ仕事をつけてアイツには楽な仕事ばかりさせているんだということで不平不満の元になりやすいです。入社前から「あなたにはこの路線でこういった仕事を担当してもらう。」といって給料や仕事を固定されていると不平不満は起きにくいのですがシフトでまわす場合必ず不平不満が生まれます。

ドライバー×ドライバー

ドライバー同士でギスギスしている会社は非常に多いように感じます。走り出せば一人仕事だし自分のペースで仕事ができそうで無駄な人間関係から解放されたいと思って転職してきた人はそのギャップに驚く人も多いです(筆者自身も最初はそうでした)。大型・中型・長距離・地場など問わず、多くの会社でドライバー同士が絡む仕事は多く完全に一人で行う仕事というのはあまりありません。

その中でも特に多い揉め事が『同じコースを走っているのになんでお前は遅いんだ!』です。

よくある例としては、Aさんはコース①を9時間で運行するのに対してBさんがコース①を運行すると9時間30分〜かかるという場合にAさんが「30分以上遅いのはおかしい!Bは途中で休憩が長いんじゃないか?!遅延行為だ!!」と騒ぐというものです。

残業で稼ぐような会社の場合Aさん側の主張としては『30分長いとBは仕事が遅い癖に給料が高い!不公平だ!』となります。コース毎に給料が決まっている会社の場合Aさんの主張は『Bはわざと労働時間を伸ばして後々楽な仕事をつけてもらおうとするための悪質な遅延行為だ!』となります(月労働時間が決まっているので長時間勤務に制限があるため無制限に長時間運行はつけられません)。その日の物量や渋滞状況・荷受けバースの状況などによって運行時間は当然前後するものなのですが、複数人でコースを回したりする会社ではほぼ100%こういったドライバー同士の俺の方が仕事早いマウントの取り合いが発生します。

最悪なのはAが自分が早く帰りたいからという理由で荷下ろし休憩など(詳しくは『430休憩の闇』で解説しています)をしていた場合です。※←違法です 荷下ろし休憩で自分はショートカットしたにも関わらず普通にやっている他人に対して「お前遅くないか?」と文句を言うということです。言いがかりにも程がありますが、このような人がどこの運送会社にも一定数存在します。また、タチが悪いことにそれをそこそこのベテランが若手に対してやるということです。結局のところ自分たちの仕事を取られたくないから新人潰しをするということなのですが、それが若い人が物流業界に定着しない一因でもあるのかなと思えます。

これはあくまでも一例ですが様々な言いがかりをつけてドライバー同士で揉めている会社は非常に多く、それが嫌で結局また辞めるという人も一定数いるのも事実です。

ドライバー×運行管理者

運行管理者のことを『管理者』と呼んだり『配車』と呼んだりは会社によって違いますが意味は一緒です。多くの場合は運行管理者資格を持っていて主にドライバーのコースシフトを作ったり運行指示書の作成・荷主との調整・車両管理・点呼などの業務を行なったりします。

余程固定のコースで確定しているといった運送会社以外では運行管理が勤務シフトを作成するという会社も多く、ドライバーと運行管理者は絶えず対立している印象があります。

最もよくあるのはキツイ仕事の一極集中に対する不満です。一般貨物の場合長距離・地場問わずほとんどの会社が少なからず手下ろし仕事を抱えています。10t車をまともに一人で手下ろしするとざっくり2時間くらいはかかります(人によっては大型の事を20tという人がいますがおそらくそれは総重量のことです。筆者は最初の会社で積載量で10t超ということで積載量呼びのサイズで教わりました。箱のサイズや架装による誤差はありますが大型の単車は積めて15tです。20tはそもそも積めません)

10t車イメージ:写真AC

それが炎天下の屋外倉庫だと熱中症まっしぐらでかなりキツイです。そういったキツイ仕事はある程度みんなで分散して負荷が集中しないようにするものなのですが、運行管理もベテランや腰痛・持病持ちには気を遣ってしまい結局動けるドライバーに負荷が偏ってしまうという事象が発生します。こうなってしまうと平等に仕事を割振りしない運行管理者が悪いとなってしまい、ドライバーによっては管理者に不満をぶちまけてそのまま退職という人もいます。

仕事内容だけではなく運行管理が出勤日と休日のシフトまで握っている場合はもっと悲惨です。休日前後のシフトや希望休・有給休暇の使い方でドライバーと運行管理者が揉めている会社は非常に多いです。

運行管理×運行管理

ドライバー同士の揉め事やドライバー×運行管理者の揉め事ほど多くはありませんが、事務所にいる運行管理者同士でもまあまあ揉めている会社はあります。

内容は本当につまらないもので、自分が組んだ配車シフトを相談なく変更されたり、予定していた車輌から勝手に変更したりといったものです。正直内容としてはその場の状況判断であって、運行にあたって大きな問題はないというものがほとんどです。管理者同士の揉め事は正直ほぼ痴話喧嘩です

ただ、運行管理者は現場を知っているドライバーがなるという会社も多く、その場合にはどうしても人が足りない状況では運行管理者も緊急的に走るという場合があります。このような場合「アイツにキツイ手下ろしやらせてやる!」という管理者同士の本当にくだらない報復配車が始まることがあります。ドライバーからしたらキツイ仕事やってくれるなら「ラッキー!」なのですが、結局ドライバー同士の揉め事と同じようにこれをベテランの管理者がやってくるので若手の管理者が嫌になって辞めていったりしてしまいます。

事故

ここまでは物流業界におけるよくある人間関係について書いてきましたが、次は少々センシティブな内容になります。

『事故』は物流の現場からは切っても切り離せないものです。『事故』と言っても物流では大別すると『交通事故』と『荷役事故にえきじこ』の二つに分けられます。

交通事故は車をぶつけてガードレールを曲げてしまった「物損事故」や自転車を巻き込んでしまった「人身事故」などイメージがつきやすいかもしれません。ケガ人や死者が出る人身事故に関しては会社にもよりますが自分の過失でやってしまった場合はほぼ一発アウトという会社がほとんどです。そもそも過失有りで死者が出た場合は交通刑務所行きの場合もあるので退職などという問題ではない場合もあります。

『荷役事故』というのは物流業界ではあるあるなのですが「運んでいる商品を破損させてしまった!」というものです。荷下ろし中に段ボールを落として中のものが壊れた・フォークリフトで下ろそうとしたら見誤って製品を貫通した・子供が飛び出して急ブレーキしたら荷崩れして商品が壊れたなど多岐にわたります。物を運ぶ物流会社にとって製品破損は信用問題です。つきものではありますがあまりにも荷役事故が多いようだと契約を切られたりというのは当たり前です。

この中でも走行中の荷役事故というのはある程度ドライバー側で対策ができます。荷物の積み付け順を考えたり、ラッシング(荷物を固定すること)を二重にかけたり、急ブレーキを踏まないような運転をしたり、手下ろし作業でも作業手順を守ったりと気をつけてさえいればある程度対策は可能です。これを怠って荷役事故を起こすと会社側からは鬼詰されます。また、精密機械などの特殊な物を運んでいる場合は弁償金額が億まで行くものが普通にあります。いくら荷主保険などをかけていても仕事を切られたり運送会社の社長自ら謝罪に出向いたりと破損の度合いによっては収束まで手間も時間も要する場合があります。そうなってしまうとドライバー内でも「あいつ◯億溶かしたらしいぞ…!」と噂が広まってしまいいづらくなって辞めていくというケースも非常に多いです。

たとえ細かい製品の破損であっても続くとドライバーを外されることもあります。一つずつは数百円単位の細かい破損であっても短期間に2回・3回と続いていくと会社によってはどんどん注意の質が重くなり、あまりにも続くようであればドライバーを外されて自社の倉庫でピッキングの仕事に配置換えなどというパターンもあります。ピッキングの仕事は多くの場合、免許を使って長時間走るドライバー職よりも給料が安い傾向が強く「これなら他に行くか…」ということでいわば追い出し部屋のような状態になっています。この場合事故による配置換えによって給料が下がったというのが第一理由というよりは、ドライバーの方が運転しているだけで楽だし(仕事内容に対する不満)、みんなに顔向けできないし(人間関係)なんなら給料も下がったから辞めようという順番です。色々な理由がある中で給料が一番波風立たなそうだから『給料が安い』を理由に辞める人が多いのではないでしょうか

破損は全部運送会社のせい!! ※番外編※

荷役事故が続くとドライバーを外されるということを書きましたが、そんな状況下でも非常に残念なことに販売元も消費者も製品破損は全て運送会社のせいにしようとします

製品破損イメージ:写真AC

ネット通販で買ったものが開封してみたら壊れていたという場合真っ先に誰を疑いますか?梱包時に壊したんだろと言って販売元を疑う、自分が開封時に衝撃を与えて壊したかな?と言って自分(消費者・荷主)を疑うという人はほとんどいないはずです。真っ先に疑われるのは運送会社です。

販売元は梱包時落として破損の可能性があると思っても梱包してしまえばわからないだろうし最悪運送会社に押し付けられる(優越的地位の濫用)と思っています。消費者自身も家の中で落として中から嫌な音がしたとしてもまだ開封していないし最初からこうなっていたとゴネればなんとかなると思っている人が非常に多いです。

結局最後に責任を取るのは運送会社です。もっと言えば運送会社ではなくドライバーです。どの荷物をいつ誰が運んだかはデジタコと伝票の記録などからかなり詳しく追うことができます。いくらドライバーが「壊していない。」と訴えたところで証拠もありませんし会社からしたら荷主に対する体裁の方が大切なのでドライバーのせいにして弁償して謝ってしまった方が楽なのです。

私の先輩の話ですがこれを象徴する話があります。ある配送センターで荷下ろしをしていたら倉庫の検品担当の人がおろした物をその場で扉一枚隔てた荷分け部屋に運んで検品していたそうです(配送センターでは荷下ろしと検品はほぼ同時にやるのでよくあることです)。するといきなり扉の奥から「あーー!!」という叫び声と同時に荷物が崩れる音がしたそうです。その直後荷物を奥に持っていた検品担当が「すいませんこれ破損してるんですけど!」と言って持ってきたそうです。誰がどう見ても検品担当が荷崩れさせて壊したのですが、そこで監視カメラ映像見せろと言って揉めても向こうが不利になる映像を出すわけもないので会社に連絡し事情説明したらお咎めはなかったものの報告書は書かされて最終的に配送時の破損として運送会社が保証したそうです。

このように責任は全て現場のドライバーに押し付けるということが横行しているので真面目な人から順にやってられないと言って辞めていくのです。

まとめ

今回は物流会社の退職理由について解説してきました。

給料が上がらないなら辞めるという理由も退職理由の一つとしてはもちろんあるのですが、給料以外は良い環境なのに給料が安いから辞めるという人は見たことがありません。

「自分にばっかキツイ配車つけやがって!そのくせ給料変わらないし!」「あの先輩は楽な仕事ばっかりだよなー…。俺らよりいい給料もらって楽できていいなー!」と言った具合に『仕事内容×給料』『人間関係×給料』と他の何かと合わさった際に不満が増幅し退職に至るというケースが非常に多いように感じます。それ以外では物流会社にはつきものである事故が重なってしまっていづらくて辞めるというのが主な退職理由の一つです。ドライバーは走り出せば一人だし人間関係少なくて楽そうだなと思って転職すると痛い目を見ることがあります。一人仕事なために複数人で同じコースを回す場合には時間や物量で優劣がつきやすく、マウント合戦が始まりやすい環境になっている物流会社もかなり多いです。

「給与が上がらないから辞めます。」と言って辞める人は十中八九それ以上に何かしらの不満を抱えています。物流という特殊な現場仕事なので人間関係や仕事の繋がり方などもそれなりに特殊になります。給与はもちろん高いに越したことはないのですが、それ以上にドライバーを取り巻く環境の整備をしなければ人材流出は止まらないでしょう。

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